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JST/JICA:地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

プロジェクトの目指すところ

国際共同研究の目的(上位目標)

アジアメガシティの代表的首都の1つであるバンコク都の将来都市交通計画に、「スマート交通戦略」の実現モデル「Sukhumvit model」を実装することを目的としています。

本研究はアジア新興国大都市において、交通の渋滞を解消し、低炭素化とThailand4.0が目指す人々のQOL向上との同時達成を目指します。渋滞現象を道路上のみでなく、道路・後背街区・都市全体の3層の交通空間システム上で捉えると共に、ICTをフルに活用したサイバー空間によるサポートにより、人々の価値観の変化を先取りして好ましい交通行動とライフスタイルの変容をもたらす「スマート交通統合戦略手法」を構築します。バンコクの中心に位置するSukhumvit通り沿道街区を対象に、これを具体的かつ実現可能なかたちで構築した交通システムを「Sukhumvit Model」として実装を試み、バンコクにおける将来都市交通計画への適用、さらには開発途上国におけるリープフロッグ型成長戦略パスの普及に資する研究を進めます。

この研究の実施により、具体的な科学技術の発展として、これまで先進国ではなしえなかったリープフロッグ型成長戦略の効果検証を実証的に可能とするとともに、QOL(Quality of Life)ベースでの都市交通評価手法の構築、ビッグデータの都市交通への適応手法の開発などの成果が期待できます。また、科学技術政策への貢献として、第5次科学技術基本計画における価値創出の取り組み「世界に先駆けた「超スマート社会」の実現(Society5.0)」のあり方、とりわけ交通部門におけるサイバー空間とフィジカル空間(現実社会)の高度な融合のあり方の1つを提示します。さらに、アジア諸国の経済成長戦略の方向性を先取りしたインフラパッケージの提案を行うことで、システムのパッケージ輸出の促進を通じ、わが国発の新しいグローバルビジネスの創出を図り、少子高齢化、エネルギー等の制約、自然災害のリスク等の課題を有する課題先進国であることを強みに変えることが期待されます。

国際共同研究の成果目標(プロジェクト目標)

1. 市民のQOL向上と社会の低炭素化を同時達成する都市交通ビジョン「スマート交通戦略」を構築し、その実現に向けた施策パッケージ評価手法を構築

2. この評価手法を適用し、Sukhumvit通り沿道街区を対象に、これを具体的かつ実現可能なかたちで構築した施策パッケージ「Sukhumvit Model」を提案

上記目標を達成するため、本研究では、卓越した実践研究者を各々代表とする4つの研究グループ構成により研究を推進するとともに、BTS(スカイトレイン)を設えるSukhumvit通りとその約20kmに及ぶ沿道の街区を対象にその社会実装を展開することで、次世代の交通戦略である「Sukhumvit Model」を実現し、効果の検証およびビジネスモデルの構築を目指します。さらには、現在タイ国が進める成長戦略「Thailand 4.0」を健全かつ具体的に進める具体的なエンジンとして「スマート交通統合戦略」を位置づけ、この戦略手法の提言を行うことをプロジェクト目標とします。各グループの目指す成果目標は以下のとおりです。

研究グループ1:土地利用と交通を統合したリープフロッグ型都市デザインの提案

研究グループ2:公共交通へのアクセス向上およびStreet for allを実現するスマート交通・街区デザインの提案

研究グループ3:居住者のQuality of Lifeに基づく都市政策マルチスケール評価手法の開発

研究グループ4:デジタルアースシステムによる統合的可視化、意思決定支援システムの実装

持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

本研究の成果は、SDGsの「Goal 11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」の達成に貢献します。また、これら政策効果を、市民の属性と場所(500mメッシュ)を計測しQOLの視点から評価するシステムを構築することにより、水害等災難からの安全、快適かつ安価な住宅及び都市・交通サービスの実現可能性を示し、市民の幸福度(QOL)に重きを置いたインフラ計画策定(道路・鉄道の組み合わせ、通勤・ショッピング・病院へのアクセスなど)の枠組みへと改革を迫るものです(Target 11.1)。

また、グループ2の実装内容であるSSV(Smart Small Vehicle)とその配車システムにより、公共交通とそれらフィーダーサービスの連携による公共交通への利便性を向上させ、低炭素で持続可能かつ通勤・病院・ショッピングなどへのアクセスを高めてQOLを向上させる輸送システムへのさらなるシフトを実現します(Target 11.2)。また、信号管制の高度化と行動支援システムの導入により、各国が急激な経済成長、都市化段階において経験する自動車交通渋滞の発生を大幅に抑制し、持続可能な都市化を促進するモデルの実現可能性を示します(Target 11.3)。 さらに、これらの取り組みを通じて、高品質かつ信頼性の高い持続可能なインフラモデルを構築すると同時に、インフラモデルのイノベーションをも促進するため、結果的に(Goal 9.)「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」に貢献することが期待されます。